価格転嫁率わずか26.2%。立場が圧倒的に弱いドライバー
2023年1~9月期の倒産件数が急増したのは、運転手不足に燃料費の高騰が重なったことが主な要因だ。
全日本トラック協会によればトラック運送事業者の9 割が中小企業である。社会的要因でコストが膨らんだとしても、大口の荷主との価格転嫁交渉はしづらい。
帝国データバンクが7月に行った実態調査では、運輸・倉庫業は26.2%と価格転嫁率が低い。コスト上昇分のおよそ4分の3を運送会社側が負担しているということだ。
トラック運転手不足はいまに始まったことではない。年間所得額は全産業平均と比較して4~12%低く、労働時間が長い。若い世代や女性に不人気で、40歳未満は就業者数全体の23.9%(2022年時点)だ。50歳以上が48.8%を占めるいびつな年齢構成となっている。
トラック運転手が長時間労働となっているのは、荷主の都合を優先するからである。荷待ち時間や荷役作業など、運転以外に拘束時間が長い。背景には事業者間の競争が激しく、荷主の立場が圧倒的に強いことがある。仕事を切られることを恐れて、利益率が低く面倒な発注でも引き受けるところが少なくない。
こうした関係が続いてきたことで、多くの荷主に輸送コストは可能な限り削りたいという意識が働きやすくなった。納品までのリードタイム(発注から納品までにかかる時間)が短くなったり、配送時間を指定したりするなど荷主の依頼条件はだんだん厳しくなっている。運送会社は同じ方面の荷物をまとめて運ぶといった効率的な配送計画を立てづらくなり、経営的なダメージは小さくない。