巡り巡って利用者側に負担としてのしかかる懸念
寺院でも無縁墓の対応に苦慮している。寺院の場合には墓の撤去費用を寺院側が負担している。京都市嵯峨にある正覚寺の住職で『絶滅する「墓」』の著書がある鵜飼秀徳氏が語る。
「寺院側にとっても墓じまいをしてもらえれば、その区画を他の方に使ってもらうなどの方策が考えられるところ、放置して逃げ切ろうとする利用者がいると最も厄介です。数百kgの墓石の撤去には、重機を入れて運び出して産廃として処分しなくてはならず、最低でも20万~30万円のコストがかかります。それを寺院側がすべて負担するのは相当に困難です」
そうした状況は、決して他人事として済ませられるものではないという。日本が「多死社会」に突入するなかで墓を管理できる主体が負担に耐えきれず消えていくと、自分たちが入る墓がなくなってしまうなど、巡り巡って利用者側に負担としてのしかかる懸念がある。お墓じまい総合サポート援人社代表の竹田繁紀氏は言う。
「高齢の住職が亡くなり、後継者がいない寺を解散するために檀家さんたちが清算しようとしたところ、数百万円もの拠出が必要になり、檀家が等分して負担したという事例があります。これからさらに高齢化が進み、こういったケースがどんどん出てくると予想されます」(竹田氏)
自身にとっても家族にとっても、無縁墓の処理に困らず済む寺院側にとっても、上手く墓じまいをすることが重要なのだ。
※週刊ポスト2023年11月17・24日号