田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の対米輸出に圧力をかけるトランプ外交の本当の狙い

 景気が良くなり、総需要が高まりディマンド・プル・インフレ(発生原因が需要サイドにあるインフレ)が起こり、その結果として金利が上昇するのは悪いことではない。しかし、外的要因で金利を上げざるを得なくなるのであれば、不必要な景気の押し下げに繋がってしまう。

 財政赤字の深刻なアメリカにとって、税収の伸びが低下する中での国債発行コストの上昇は痛い。積極財政政策でインフラ投資を増やそうとしているトランプ政権にとっては、ただでさえ、長期金利上昇圧力にさらされている。そこにコスト・プッシュ・インフレ(発生原因が供給サイドにあるインフレ)が加わるような事態はどうしても避けたいところだ。

 10月末時点において、日本に抜かれたとはいえ、中国はアメリカ国債の大量保有国である。アメリカの同盟国である日本が、厳しい局面でアメリカ国債を自由に売るのは難しいが、中国はそうではない。この点からも、中国と敵対することはアメリカにとってリスクの高い選択である。

 とはいえ、中国との間の貿易不均衡を是正しようというトランプ次期大統領の言い分は正論であり、間違ってはいない。

 もう少し詳しく統計データを見ると、アメリカにおける輸出国トップはカナダで輸出シェアは18.6%、第2位はメキシコで16.0%、中国は第3位で7.6%に過ぎない。ちなみに、日本は第4位で4.3%である。

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