田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の対米輸出に圧力をかけるトランプ外交の本当の狙い

 中国からの輸入は多く、輸出は少ない。その結果、貿易赤字は全体の47.4%を占め、国別ではダントツのトップである。第2位は日本だが、9.3%に過ぎない。

 貿易赤字が深刻なアメリカにとって、中国との間の貿易不均衡を正すことは重要課題である。

 アメリカにとって、対中輸入の減少速度は国内での産業構造調整、海外との貿易構造調整の進捗に合わせた比較的ゆっくりとしたペースが望ましいだろう。しかし、輸出の増加についてはいくら早くてもかまわない。

 トランプ次期大統領は、中国に対してアメリカへの輸出に圧力をかけようとしているが、それはアメリカからの輸入(アメリカから見れば中国への輸出)拡大を引き出すための戦略であろう。貿易交渉では、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のような多国間ではなく、2国間による貿易交渉を進めようとしているが、中国に対しても、そうした2国間交渉を進めているのだといった捉え方をすると分かりやすい。

 そうであるならば、中国がアメリカに対してより市場を開放したり、一帯一路戦略での利権の一角を譲ったりすることで両国間の調整はまとまるのではなかろうか。中国側からすれば、これは対応できる内容である。重要なことは、アメリカ側は中国側に何を譲歩するのかという点である。トランプ次期大統領は中国包囲網の象徴であるTPPからの離脱を表明しているが、そのことが大きなヒントになるだろう。

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