新潟県の東蒲原郡阿賀町で、31回目となる「狐の嫁入り行列」という祭りが4年ぶりに開催された。そして、この狐火伝説に由来する祭礼と時や場所を合わせるかのように開催されたのが、新潟県のEV(電気自動車)オーナー達を中心としたオフ会。古き伝説にまつわる祭礼と最新のEVオーナー達がどのように交わり、どんな思いを抱いているのか。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。自動車ライターの佐藤篤司氏が、最高のドライブルートと今時EVオーナー達の生態をレポートするために、興味津々で日産アリアB9を走らせた。
美しい自然の中と文化に溢れた人気ドライブルート
全国各地に伝わる狐の嫁入り伝説。なかでもここ阿賀町の津川地区(旧津川町)で行われる嫁入り行列は、その煌びやかな演出と5万人を超える来場者が集うことで、広く知られています。これまでは5月3日、つまりゴールデンウイーク中に開催されてきましたが、コロナ禍によって2020年より3年連続で中止。今年は開催日を10月8日へと移行しました。
当日はJR東日本新潟支社による臨時快速「つがわ狐の嫁入り号」なども運行され、人口9000人ほどの阿賀町(津川地区は5000人ほど)の祭礼に、4万人を超える(主催者発表)に観光客が来場。総勢105人による優雅で幻想的な「狐の嫁入り行列」の練り歩きに酔いしれたのです。
町には行列の参加者ばかりか、JR津川駅の駅員から磐越自動車道の津川インターチェンジの料金所職員や祭の警備にあたる警察官、さらに祭りを目当てに訪れた多くの観光客までが、狐のメイクを施して秋の一日を心から楽しみます。その光景はまさに「町に狐が溢れ、狐顔に染まる」と表現されるほど。
今回、EVオーナー達が集い、オフ会が行われた津川地区ですが、古くは会津藩の領地。町の中心を、新潟県の「新発田」と福島県の「会津若松」を結ぶ「会津街道(旧国道49号/現在は県道14号新発田津川線)」が抜け、脇を流れる一級河川の阿賀野川では水運が盛んに行われるなど、交通の要衝として栄えてきました。古い町並みが残る会津街道ですが、途中2カ所でかぎ型に折れ曲がり、ちょうど敵の進軍に備えた城下町のような作りになっています。会津藩にとってこの町が重要な戦略的拠点であったことがそこここに見えます。
週末ともなればJR磐越西線を季節定期列車「SLばんえつ物語」号が津川駅に停車します。さらに横を流れる阿賀野川は日本百景のひとつであり、その渓谷美を眺めながらのライン下りを楽しむ事もできます。現在の国道49号線は津川地区のバイパスとして機能していて、新潟から会津若松までの約100kmに渡り、美しい景色が続くドライビングルートとしても人気。こうした豊富な観光資源にも恵まれた地の利もあって、最近ではクラシックカーイベントなども開催され、大いに賑わったそうです。そんな数々の催し物や見どころの中でも、年に一度の「狐の嫁入り行列」は特別な催事であり、重要な一大イベントとして定着しています。
今年も嫁入り行列が行われる街道沿いには、色々な狐の作り物や飾り付けが施され、雰囲気を盛り上げていました。そんな祭礼一色に染まった街道の一角に、これまでは見ることのなかった展示を発見しました。