けがして再び考えた死に対する思い
大腸がん判明から9年。再発もなく、以前と変わりない日常を過ごしている岡野さんを、再び、アクシデントが襲った。
「この取材を受ける数日前にけがをしてしまったんです。ちゃんと先祖供養をしておこうと、お墓参りに行った帰りに転倒して打撲。いま、杖がないと歩けないんです」
この出来事が彼女の死生観に大きく影響を及ぼした。
「がんが判明したときは、まだ60才になったばかりで、『死』なんてまったく考えてなかったんです。自分は運がいいと思っていましたし、保険が下りなかったことは悔しかったけれど、結果的には息子との絆も深まった。英語もリベンジできて、何より手術して生きられる確率が70%もある!って前向きに捉えていたんです。
でも70才を前にして、けがをして感じたことは、果たしてあの頃と同じように考えられるかなということです。いまなら『30%も死ぬ確率がある』と、考えただろうと思ったんです。
けがをしてこんなふうに考えるんだから、いま病気になったら、さぞかしショックだろうと思います。だからいつ死んでもいいように生前整理をはじめました。
自分が病気やけがをしたときどう思うかは、そのときの年齢や環境、精神状態によっても変わると思います。だからこそ、いまの自分を肯定し、悔いなく生きること。それがとても大事だと、いまは実感しています」
【プロフィール】
岡野あつこ/1954年生まれ。夫婦問題研究家、公認心理師、結婚・離婚カウンセラー。YouTube「岡野あつこチャンネル」は登録者数約4万人。豊富な経験によるカウンセリングを行う。
取材・文/廉屋友美乃 写真/本人提供
※女性セブン2023年11月30日・12月7日号