国税庁は11月22日、「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を公表した。これによると、今年6月までの1年間に調査した63万7823件の半数以上(33万8268件)に申告漏れなどがあった。申告漏れ所得の合計は9041億円にのぼったという。
同報告書には「所得税の不正還付は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性が高い行為であるため、特に厳格な審査・調査を実施しています」とある。そうした厳しい言葉も並ぶ報告書のなかでは、1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種をランキング形式で公表している。別掲図は今回発表された上位10業種の一覧だ。
「この上位10業種の変遷を見ると近年の日本社会の変化が見えてきます」と語るのは税理士の新名範久氏だ。
「大まかに言うと“大きな儲けを出した人たちが税金を払うことを惜しみ、無理な節税に走って国税庁の指摘を受けた”という構図。それがこのランキングによって示されているように感じます。『経営コンサルタント』は2年連続で1位ですが、2019年以前はほぼ一貫して『風俗業』と『キャバレー(キャバクラ)』が、1位と2位を独占していました」
「現金商売」だから?
ランキングに変化が生じたことには、2020年からのコロナ禍が大きく影響していると新名氏はみる。
「この前に1位だった風俗業は、利用客が支払い履歴の残るクレジットカードなどではなく、現金で支払うケースが多い業界です。だから店の側にも利用明細などの履歴が残りにくく、それが申告漏れに繋がりやすいと理由だと言われています。また、儲かっているお店を妬んで、同業他店が税務署に密告するケースもあると聞きます。そうした理由で調査を受けやすい業態と言えそうです」