人生100年時代、その“折り返し地点”から先をどう生きるか──。『黄昏流星群』『島耕作シリーズ』などで知られる漫画家で、中高年の生き方に関する著書も多い弘兼憲史氏(76)が提言する。
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人生の後半戦に入ると、それまで家族のため、会社のため、国のためなど、「何かのため」にずっと働いてきた人たちが、突然、違うステージに立たされます。すると、それまで直面したことのなかった人生の選択肢がいくつも現われます。
僕の周りにも、様々な人がいます。
趣味に没頭し、おじいちゃんたちを集めてバンド活動を本格的に始めた人もいれば、会社の重役を務めて社交的だったのにどんどん影が薄くなり、ゴルフに誘っても来なくなる人もいる。昔の肩書きを手放せず、「元○○」と書いた名刺を持ち続ける人もいますし、都会を離れて妻と田舎暮らしをしていたはずが、戻ってきた人もいます。
何が正解なのかは誰にもわかりません。だからこそ、まずは自分にとって何が幸せなのかを考えてみましょう。
「幸せ」の価値観は人それぞれで、子供や孫たちと一緒に老後を過ごすことを幸せと思うか、夫婦2人で、あるいは独りで悠々自適に暮らすのが幸せだと思うのか。
仮に子や孫たちと一緒に暮らすとしても、昔は大家族制で一つの家に3世代が住むというのも当たり前にありましたが、今はマンション暮らしも多く、なかなか難しい。
自分の預貯金を子や孫に注ぎ込んでも、いざ面倒を見てもらわなければならない時にどうなるのかはわかりません。
家族の世話にならずに自分たちが好きなことに自由に時間を使えるような人生にするなら、金銭的な部分がより重要になってきます。年金だけでは足りず、働かざるをえない人も多いでしょう。
幸せの基準が「お金」か「心」かは究極の選択ですが、僕は心が豊かになるほうを重視します。もちろん、お金は大事です。ただ、お金があるから幸せになれるわけではなく、お金は不幸を減らせる一つのツールのようなものと考えています。