田代尚機のチャイナ・リサーチ

ヘッジファンドの人民元売り崩し、失敗に終わったか【2】

 当局は人民元為替市場を安定させるために一旦、オフショア人民元市場を縮小させている。オフショア人民元の需給は締まっている。こういう状態での売り仕掛けは少し強引過ぎたのかもしれない。

 中国は監督管理できないことを最も嫌う。オフショア市場での売り崩しを十分警戒している。

 トランプ大統領が正式に就任すれば、貿易摩擦は激化するだろうが、その時は人民元に上昇圧力がかかるだろう。現段階では、できる限り人民元を安く誘導しておきたいだろう。

 当局としては、緩やかな人民元安が望ましいはずだ。こうした状況の中で、売り崩し側にもわずかだがチャンスはあるだろう。

 ただし、資金流出の本質は人民元安トレンド発生による投機に過ぎない。また、中国人民銀行は資金流出をコントロールする手段を持ち合わせている。また、昨年1月以降は、前日の終値ではなく、通貨バスケットをより参考にするといった基準値決定方式に変えている。中国人民銀行は巧妙に基準値操作を続けている。

 さらに、オフショア人民元市場は一見、取引自体は自由だが、人民元供給のコントロールを通じて、中国人民銀行が監督管理している。

 経験、資金量ともに豊富な欧米系ヘッジファンドといえども、当局を打ち負かすのは簡単ではない。(了)

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサル ティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。