実はクラウンスポーツ、4モデルの中でもっとも全長やホイールベースが短いのですが、その割には1880mmと車幅が広くなっています。そうしたスペックから見ても、コーナーで安定してレスポンスのいい走りが想像できるのです。クラウンスポーツには2.5LのHEV(ハイブリッド)の4WDモデル「Zグレード」の590万円と、2.5LのPHEV(プラグインハイブリッド)で4WDの「RSグレード」の765万円の2種があります。
扱いやすく、軽快に走る
今回試乗したのは590万円のHEV、Zグレードです。走り出してすぐに感じたのは扱いやすさです。DRS(ダイナミックリアステアリング)というシステムが装備されていますが、これはハンドル操作と車速に応じて、リアタイヤの切れる角度を制御する「4輪操舵システム」です。これをクラウンスポーツ用に最適にチューニングしてあり、小回りの良さや低速域での軽快感、さらに高速域での安定感を実現しているのです。最小回転半径が5.4mというのもひとまわり小さなクルマの数値と言えますから、扱いやすさはかなりいいと思います。
市街地を含めた一般道ではレスポンスにも不満はなく、非常に心地よい走りを示してくれます。ある意味、どっしり感とは言えない走りで「これがクラウンの走りなのか」と、古くからのユーザーだと感じるかもしれません。しかし、クラウンスポーツは「クラウンの新基軸」であり、スポーツSUVの走りとして「ファン(楽しい)」といえるものでしょう。スポーツを冠するにふさわしい走りだと思います。
楽しさを実感できるのはハンドリングのリニアさやタイヤの接地感、減衰性能などを実現してくれる独自のサスペンションセッティングにもあります。フロントに182馬力(Zグレードは120馬力)と、さらに強力なモーターを備えた「RSグレード」(765万円)の走りは、よりパワフルで、刺激的な走りを実現していると思います。この走りがあるからこそ、アスリートのようなスタイルが生きると言えます。
そんな走りを楽しみながら、事前チェックの時に気になっていた機能があることを思い出しました。トヨタが初採用したという「調音天井」です。これは室内音を反射することで、言葉がダイレクトに届きやすくするというもの。乗員同士が会話しやすい空間を目指したようですが、試乗の時点では後席の人との会話がどのようにスムーズになったかは、あまり実感できませんでした。それでも、こうした装備を積極的に採用するあたりは、「さすがクラウン」といえるでしょう。
クラウンというのは代々、機能面でもメカニズムでも、そしてデザインにおいても、つねに挑戦的でパイオニア的な役割を果たしてきました。その意味で言えば、スポーツSUVというスタイルこそ、新時代の憧れを醸成するモデルの最右翼と呼ぶことができるかもしれません。
今回のクラウンスポーツの発表に合わせて、「お客様の多様なライフスタイルに寄り添うブランド拠点・全モデルの展示拠点」となる店舗「THE CROWN」もオープンします。ここを起点に新しいクラウンの価値がどのように育っていくのでしょうか。第4のモデル、「エステート」も発売開始となります。しばらくはクラウンの新たな挑戦に注目していきたいところです。