マツダ初の量産電気自動車(BEV)として2019年の東京モーターショーで世界初公開された「MX-30」。マツダの電動化戦略の中心に据えるべき専用モデルとして姿を現したこのBEVは、この時点では欧州向けモデルという発表だった。
その翌年、日本向けとして販売されたのは、マツダ独自のマイルドハイブリッドと2Lの直列4気筒ガソリンエンジンを組み合わせた「e-SKYACTIV G(イースカイアクティブジー)」というマイルドハイブリッド仕様。35.5kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載し、一充電走行距離は約200kmというスペックは正直、心細い数値で、当面はリース販売ということになったのも理解できる。
マツダが次に用意したのが、BEVに発電用のロータリーエンジンを搭載し、外部充電もできるというプラグインハイブリッド(PHEV)の「MX-30 e-SKYACTIV R-EV(以下、MX-30 ロータリーEV)」。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、今回は自動車ライターの佐藤篤司氏が11年ぶりのロータリーエンジン復活でもあるマツダ「MX-30 ロータリーEV」をレポートする。
発電専用のロータリーエンジンに込められた思い
マツダは電動化戦略にマイルドハイブリッド車(MHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)、そしてPHEVの3本柱を用意することは既定路線だったと説明しています。
つまり今回の「MX-30 ロータリーEV」も、電動車開発の早い段階から決まっていたというわけですが、事情通の中では「ロータリーエンジンを搭載したレンジエクステンダーになる」という説が出ていました。レンジエクステンダーは、EV並に容量の大きなバッテリーを搭載し、基本はBEVとして外部充電を行い、モーターで走ります。しかし、長距離ドライブなどで駆動用バッテリーが空に近づき、充電スポットも見つからないような状況になると、発電用の小さなエンジンを始動させ、いわば「緊急的に発電してバッテリーに充電する」システムです。
一方、今回のMX-30 ロータリーEVは、BEVのようにモーターで走りながらも、必要とあればいつでもロータリーエンジンが始動して発電したり、バッテリーに充電しながら走る「シリーズハイブリッド」に分類されます。その上でプラグインハイブリッド(PHEV)として、外部充電も可能という利便性も備えています。この方式はレンジエクステンダーよりもバッテリーが小さくて済み、軽量化になります。