イスラエル情勢が左右する海上輸送費上昇の懸念
12月に入り、ハマスを支持するイエメンの親イラン武装組織フーシ派がイスラエルに向かって航海する船舶に対して頻繁に攻撃を仕掛けるようになっており、イスラエル、ハマスの衝突が紅海にまで広がっている。アジア-欧州航路について、喜望峰への迂回を迫られるとすれば、海上輸送費の上昇が懸念される。
貨物運賃の動向を示す指数として中国輸出コンテナ運賃指数(CCFI)がよく用いられるが、12月22日の時点では879.75で15日と比べ1.2%上昇している。3000を超えていた2022年1、2月と比べると、依然として低い水準であることには変わりはないが、クリスマスによる需要がひと段落したこの時期は一般的に下がりやすいことを考えれば、実体経済への影響が出始めているようにもみえる。
もっとも、海運大手のAPモラー・マースクは24日、紅海経由の航行に向けて準備を進めていると発表しており、一旦コンテナ輸送運賃急騰の懸念は後退したが、結局はフーシ派次第であり、先行きは不透明だ。
中国では不動産不況が厳しいが、当局は数量の回復よりも、価格の維持により強い関心を持っている。不動産取引はほとんどの場合、銀行借入を介して行われる。当局による銀行への強いグリップなどを通じた社会主義経済ならではの全方位からの市場介入がバブル崩壊を防ぐだろう。ただ、不動産会社への貸出の緩和、住宅購入制限の緩和、住宅ローン優遇などに加え、都市化の進展、都市内の遅れた地域の開発加速などで需要を直接刺激するだろうが、それでも不動産投資は穏やかな回復に留まりそうで、経済成長率自体は鈍化しそうだ。
とはいえ、中国経済の回復の遅れは対中貿易で多額の貿易黒字を計上している韓国、台湾、日本などのアジア諸国にとってはネガティブだが、米国にとってはグローバルで物価を安定させる効果が期待できることから、むしろ好材料となるかもしれない。
米国では2024年は大統領選挙の年に当たり、現時点では共和党(トランプ前大統領)有利とみる向きも多い。米国の不安定な外交政策もあり、2024年の米国経済・株式市場は予想の難しい、波乱含みの1年となりそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。