本当に「組織的な不正」ではなかったのか
同社においてこうした不正が蔓延した原因について、先の報告書では〈本件問題が生じた真因は、ダイハツの経営幹部が、短期開発の推進に当たりその効用にばかり目が行き、不正行為の発生というその弊害に思いが至らず、不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進したことにある〉と指摘。経営幹部が開発部門に対し、無理な開発期間の短縮化を押し付けたために、現場の係長級の社員が不正に手を染めたとしている。
一方で、〈室長の関与が認められたごく一部を除き、部室長級以上の役職者が現場レベルの不正行為を指示し、あるいは黙認したというようなダイハツが組織的に不正行為を実行・継続したことを示唆する事実は認められなかった〉としている。
経営幹部に責任があるが、現場がプレッシャーに負けて不正に手を染めただけで、組織ぐるみではなかったという解釈だ。しかし、現場の社員だけでこうした不正行為を行なうのは可能なのか、疑問も残る。和田氏はこう見る。
「このような不正は担当者だけで実施できるものではありません。試験部門の責任者、設計部門、品質部門も当然認識していたと考えられます。特に、設計部門が積極的に関与しないとできないことです。単にデータを差し替えるのと異なり、たとえば、タイマーでエアバッグを作動させるといった不正行為は、その場にいた者がみな知っていて、協力しないとできないからです」
複数部門にわたる組織的な関与について、ダイハツの広報に見解を訊いたところ、「第三者委員会から報告書を受け取ったところで、まだ弊社からお答えできることはありません」との回答だった。
「日本製品全体の信頼性低下」に繋がりかねない
今回の事案が業界に与えたインパクトは極めて大きいと和田氏は言う。
「ダイハツはトヨタの子会社であり、ダイハツの不正はひいては日本車の品質への信頼性を低下させ、自動車に限らず、日本製品全体の信頼性低下にまで繋がりかねません」
これまで国交省は、自動車メーカーの不正に対して厳しい姿勢で臨んできており、その結果、会社の存続にかかわる事態まで発展したケースが近年も見られた。