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令和ロマン優勝に「中学受験界隈」が興奮反応 芸人仲間も「高学歴芸人は賞レースに強い」と分析する納得の理由

進学校から難関大学を経てお笑い芸人の道へ

 令和ロマンの学歴が注目されたのは、元々、お笑い芸人は高学歴というイメージが薄いからであろう。今でも大阪の芸人たちの経歴を見てみると、高校を卒業後に、吉本の養成所NSCに入学するというパターンも多い。これが漫才師の王道の学歴だったはずだ。今でもまれではあるが中卒でNSCに入学してくる芸人すらいる。

 しかし、今年のM-1でも大卒の芸人が台頭してきている。3年連続でM-1の決勝に出ている真空ジェシカも、ボケの川北茂澄は、埼玉の名門、県立川越高校から慶應義塾大学に進学し、相方でツッコミのガクは中学受験をして青山学院中等部に入学し、青山学院大学を卒業している。

 敗者復活で上位3組に選ばれ、惜しくも決勝を逃したナイチンゲールダンスの中野なかるてぃんは一橋大学出身だ。また、2018年にM-1で最年少で優勝した霜降り明星の粗品は中学受験をし、同志社大学系列の中学に入り、同志社大学に進学をしている。

 受験戦争を乗り越えてきた若手芸人たちがお笑いの賞レースで好成績を収めているわけだ。ある中堅芸人はYouTubeでこういう旨を指摘していた。

「高学歴な連中は分析と対策に長けている」

 中学受験、大学受験を乗り越えてきた彼らは、“大人”が課した試験の傾向を分析し、戦略的に対策を立てる能力が高い。M-1で2回戦以降ではそうは退屈な漫才はないし、ましてや決勝まで進むようなコンビもどれも面白い漫才をするに決まっている。しかし、その中で勝ち抜くためには戦略が必要になろう。とびきり面白い漫才をしても戦略を間違えると勝てないこともあるのだ。

高比良くるまが明かしていた、決勝でやるネタの順番の試行錯誤

 今年のM-1でも「戦略ミスだったのでは」と指摘されたコンビもいる。準優勝のヤーレンズは、ネタの順番を変えれば優勝できたかもしれないという指摘もある。1本目(大家)も2本目(ラーメン屋)もクオリティは高かったが、1本目のほうがより強かったように見えるからだ。2本目のネタでも最終決戦には進めただろうから、より強いもう一方を最終決戦で披露すれば勝てたのではという分析だ。

 1本目で勝たないと決勝に進めないから、不安になって、どうしても一番強いネタを持ってきてしまう。しかし、それだと決勝で出すネタが2番手のネタになるので、決勝での勝利は遠のく。このパターンは、かつて笑い飯がなかなか優勝できなかったと指摘されてきたことを思い出させる。笑い飯が何度も決勝に出てなかなか優勝ができなかったのは、いつも1本目に強いネタを持ってきて、2本目が弱くなってしまったからだという意見も見かける。

 それに対して、令和ロマンは完璧な分析と対策を練ってきた。高比良くるまはウェブマガジンの連載の中で、今回のM-1の戦略と分析を明かしている。

 そこでは、決勝でやる1本目のネタと2本目のネタをどうするかを決めるために、試行錯誤をしていたことが綴られている。

《自分たちがやろうかと思っている2本の組み合わせじゃなくて、自分たちのネタの中でさや香さんっぽいネタを1本目にやってみて、その後に俺らの準決のネタをやったらどうなるか、真空(ジェシカ)さんっぽいネタをやった後ならどうなるか……って勝手にシュミレーションしてますね。(中略)今までの何十倍もの作業が必要になってきてびっくりしてます》(「コレカラ」連載の「令和ロマン高比良くるまの漫才過剰考察」2023年12月23日更新記事より)

 これは中学受験用語でいう「思考力」である。めんどくさがらずにコツコツと試していく力を指す。難関校で出題される算数の難問はまず初見でどう解くか分からないことが多い。いくつかの解き方を思いつくとして、それを実際にひとつひとつ試していく作業が必要になる。めんどくさくなって普通は挫折するが、それをやり遂げた受験生が難関校に合格をしていく。

 つまり、令和ロマンの二人はちゃんと「思考力」が身についているのだ。これは他の賞レースで結果を出している高学歴コンビも同様だろう。

「大学生の頃に、付き合いで学生お笑いの公演に行きました。学生の漫才なんて大抵はつまんないんです。オリジナリティないし。その中で唯一ナイチンゲールダンスはシュールで個性的なネタをやっていました。女子大の海賊サークルに属する女子学生が強奪行為で7つの海を制覇しようとするというストーリーです。フェミニズムを描いた内容でした。それをシュッとした男子二人がやっているのが面白かったんです。そんな二人も敗者復活では、分かりやすくてポップなネタをやって、オズワルドに勝ち、上位3組に残っていました。っていました。ちゃんと対策をして挑んで、結果を出しているわけで立派だなと思いました」(前出のお笑いファン)

 お笑いサークルの中でプロになるのはよほど自信があるコンビだ。その彼らが、高い思考力で傾向と対策をするから、どんどんと台頭していくように見える。

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