増大する軍事費が株式市場を支えている?
財政政策はどうなっているのか。政府支出から政府歳入を差し引き、それをGDPで割った比率(IMF統計より算出)の過去5年間(2018~2022年)の推移をみると、5.32%、5.75%、14.00%、11.62%、3.71%となっている。2020年、2021年に新型コロナ対策で強烈な財政赤字を計上しており、2022年はその反動で新型コロナ前よりも低い赤字率となってはいるが、依然として赤字であることに変わりはない。緩和気味の財政政策が多少のラグを伴って株式市場に好影響を与えた可能性がありそうだ。
気になるのは軍事費ではなかろうか。過去5年間(2018~2022年)の伸び率の推移をみると、5.5%、7.6%、6.0%、3.6%、8.8%となっており、2022年の実額は8769億4300万ドルに達している(世界銀行より)。キャッシュフローベースでどれだけ軍事関連産業に資金が回ったのかはわからないが、一部の市場関係者が考えているように、軍事費として支払われた資金が直接ないし回りまわって株式市場に流入し、それが呼び水となって株式市場を支えたといった見方も否定できない。
この点について、今後も株式市場にプラスとなるような状況が続くだろうか。地政学リスクが現在よりさらに高まれば、欧州、日本、韓国、台湾などがグローバル軍事関連産業に対して、これまで以上に巨額の資金を提供し、それが株式市場に還流するかもしれない。
2024年は企業業績の鈍化が見込まれるだけに、株式相場は需給環境に大きく左右されそうだ。インフレ、景気減速の程度やそれへの対応としての金融政策に加え、地政学リスク、米国の外交政策などによって、市場見通しはめまぐるしく変化するかもしれない。難しい投資環境だ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。