故人と縁のある人に広く声をかけて、最後のお別れを──そんな葬儀の常識はコロナ禍を経て、大きく塗り替えられた。ごく近しい人だけに出席者が限られる「家族葬」が当たり前になり、「コロナ後」となってもそれが定着したままであるために、様々な問題が噴出しているという。
実際、国民生活センターでは、葬儀をめぐるトラブルの相談が増えており、2020年度は686件だった相談件数が、2022年度には951件にのぼった。寄せられる相談は「葬儀費用」に関する問題が多い。規模の小さい葬儀なのに、想像以上に費用がかかってしまったという話が目立つ。
費用面については複数社の「見積もり」を取ったり、予算を明確に設定するなどの対策が必要となるが、費用面以外にも「落とし穴」は潜んでいる──。
故人の兄弟姉妹に声を掛けないとトラブルに
家族葬が広まったことによる人間関係のトラブルも少なくない。大阪・天王寺にある銀龍山泰聖寺の純空壮宏住職が言う。
「コロナ禍の時は感染拡大防止のために人数をしぼる葬儀が自然でしたが、5類感染症となった後も同じように考えていると問題につながります。“なぜ声をかけてくれなかった。お別れしたかったのに”といった苦情が出てくるのです。亡くなった方の子世代が、故人の兄弟姉妹を呼ばないで後にトラブルになってしまうケースが多いですね。それをきっかけに親戚付き合いがなくなる例まであります」
葬式・お墓コンサルタントの吉川美津子氏も「最低限、親の兄弟姉妹には声をかけるべきでしょう」とアドバイスする。
「もちろん、故人との関係が深いかは一概には言えません。だからこそ、お知らせをしたうえで葬儀に来てもらえるかどうかは、呼ばれた側が判断することだと考えるのが望ましいと思います」