気持ちの整理はつくのか
また、葬儀を簡略化することは手間やコストを抑えることにつながる一方で、デメリットもあると認識しておきたい。佐藤氏が続ける。
「通夜・葬儀を行なう一般的な形態の葬式の場合、喪主にとっては通夜が本番の葬儀の“リハーサル”のような位置づけとなり、座る位置から焼香の手順まで確認したうえで翌日の葬儀に臨めます。それが通夜を省略する『一日葬』だとぶっつけ本番になり、段取りがわからずにうろたえたりしてしまう。参列するのが家族・親戚や近しい関係者だけだったとしても後々まで“あそこの息子はダメだった”と陰口を叩かれることになります」
また、日中の葬儀はどうしても外せない仕事と重なる可能性などがあるため、“通夜があれば最後のお別れができたのに”といった苦情を言われる可能性もあるという。
「お経をあげてもらう回数を減らすことで葬儀のコストを圧縮できるのはたしかですが、僧侶の読経があることで気持ちの整理がつく面もあります。直葬が終わった後に、“お経もあげずに親を骨にしてしまった……”と子が後悔の気持ちを抱いているケースも散見されます」(佐藤氏)
葬儀が小規模かつ簡素になっていく流れがあるなかでも、佐藤氏は「喪主や一部の家族だけで葬式の形態を決めてしまわないことが重要」だとアドバイスする。
「葬式の主役はあくまでも亡くなった本人であって、喪主ではありません。本人がどんな人と関係が深く、その親しかった人たちがどう見送りたいのかという点も大切。早い段階からよく話し合って、準備を進めておくことが後悔や失敗のない葬式につながります」(佐藤氏)
※週刊ポスト2024年2月2日号