コロナ禍を経て、定着した家族や近しい友人など限られた一部の人だけが招かれる「家族葬」。その一方で、多くの関係者が参列するのが「一般葬」となるが、その分類とは別に、葬儀自体を簡略化していく流れがある。
病院から火葬場に直行
一般的な家族葬は、故人と親しい人だけが集まって「通夜、葬儀・告別式」を執り行なうものを指すとされるが、「通夜や葬儀を省略してしまう」という形態も少しずつ広まっている。佐藤葬祭代表の佐藤信顕氏が言う。
「通夜を省略して葬儀だけにする形態が『一日葬』と呼ばれます。さらに、葬儀・告別式も省いてしまって、病院で亡くなったらご遺体を自宅に戻さず、火葬場の霊安室などに直接運び込むのが『直葬』です。基本的に直葬が最も安価な形態。火葬代の他に棺、ドライアイス、骨壺や寝台車の費用、葬儀社の人件費と遺体保管料、雑費で25万円程度の額に収まります。
遺体は直接火葬場に運び、お坊さんがそこに来てお経をあげる『炉前葬』という形態もあります。こちらの場合、直葬の費用に5万円程度のお布施がプラスされる。戒名が欲しければさらに10万~15万円がかかります」
かつては、亡くなった当日に自宅や安置所に菩提寺の住職を迎える「枕経」があり、通夜・葬儀と合わせて3回は読経を行なってもらうのが一般的だったが、それをどんどん減らしていく選択肢が生まれているわけだ。
「ただし、簡素な葬儀にしようと思っても、葬儀社選びを失敗すると思った通りには進みません。直葬にしたいと相談したのに、“火葬場が混んでいて次に使えるのは2日後です”と言われ、“2日間保管するとドライアイス代が2万4000円プラスになり、遺体管理料も追加で3万円かかります”といった具合に費用が膨れあがっていくケースは珍しくない。
大切な人が亡くなってから慌てて葬儀社を探し始めると、気が動転して失敗しがち。親が高齢になった場合は、あらかじめ地域のなかで評判のいい葬儀社を探しておくことが重要です」(佐藤氏)