借金や自分への投資は、生涯現役をめざすモチベーションにもなる。超高齢社会を迎え、「老後2000万円問題」が唱えられる日本において、必要なのは貯蓄ではなく、いくつになっても働き続けられるマインドではないかと中尾は説く。
「老後は2000万円必要とされるけど、実際にいくらいるのかわからないから、ずっと働いて報酬を得ることが必要だと思う。世の中には“何もしなくていいです”がうたい文句の高級老人施設もあるけれど、いまの高齢者は働きたい人ばかり。みんな人の役に立ちたいのに“何もしなくていい”と言われるのがいちばんつらいですよ。
例えば、家族の料理を作るとき、“おいしい”と感謝されたらうれしいでしょう。そういう環境に身を置くことが大切なんです」
年齢を重ねるとどうしても将来が不安になったり、新しいことを始めるのが億劫になりがちだ。でも思いきって自分から動いてみることで開ける道があるはずだと中尾は続ける。
「私くらいの年齢になったら“いつか”“そのうち”なんて悠長なことを言ってられません。確かにいくらトレーニングをしても若返ることはないけれど、将来を不安がって生きても仕方なく、終わりは誰にでも平等に訪れます。ただ待っているだけでは楽しみは得られないから、自分で決めて動くことが大事です。それに、自分から動いてみると、いろいろな世代の仲間や友達ができるんですよ」
「多少の煩わしさはあっても誰かと一緒にいる方がいい」
中尾自身、これまで自らアクションを起こすことで大勢の仲間を得てきた。
現在親しくつきあっている“ご近所さん”たちは、2006年に還暦を迎えた中尾が幾度目かの借金をして自宅敷地内に建てたアパートの住人なのだという。
「前年に父親を見送ってひとりになり、老後の生活を考えたら、親しい知り合いがすぐそばにいれば安心できるだろうとアパートを建て、若い知り合いに貸すことにしました。家賃を抑えて、若い人たちを応援したい気持ちもありました」