試行錯誤の末に完成した「ラーメン押し寿司」は、細かく刻んだ麺にチャーシュー、ネギ、ゴマ、メンマを加えてシャリの上に乗せ、甘たれとコショウで味付けして、棒状に押し込んだもの。まるでラーメンを食べているような不思議な食感もあり、試食スタッフに「おいしい」「発想が面白い」と絶賛されたことから、松島さんは「これはイケる!」と大きな手応えを感じたという。しかし――。
「試験販売した店舗では、お客様から『おいしいけど、わざわざ食べようと思わない』といったご意見が多数寄せられました。お子様には喜んでいただけると思ったのですが、結果は厳しく、正式なメニューにはなりませんでした。私もちょっと調子に乗り過ぎたか……と反省の日々でした」
「お好み焼き寿司」「きつねうどん風にぎり」「TKG・卵かけご飯寿司」
そう振り返る松島さんは、もともとは和食の料理人。たまたま訪れたくら寿司で「味とクオリティの高さに衝撃」を受け、中途入社したという。
「くら寿司に入社後、配属された商品開発部門で考案した『鯛のねぎ塩たれ寿司』が大当たりしました。その勢いで『ラーメン押し寿司』を手掛けたものの大惨敗。くら寿司にきてくださる“お客様目線”が欠けていたと反省しています」
くら寿司の開発チームは年間3000もの新商品を試作。正式に採用されるのは1割という狭き門だ。日の目を見なかった商品は少なくない。志半ばで頓挫した他の「大コケ商品」について松島さんが振り返る。
「その後、シャリの上に素揚げしたお好み焼きを乗せた『お好み焼き寿司』などを開発しましたが、これもNG。ならばと、きつねうどんの出汁のジュレに天かすとネギを加えた『きつねうどん風にぎり』や、シャリと温玉を組み合わせた『TKG・たまごかけごはん寿司』を考案しましたが、試験販売でまったく売れない。途方に暮れました(苦笑)」