積み立て投資か一括投資かは難しい問題で、複利のパワーを考えれば、投資期間が長いほど有利なのだから、手元にある余裕資金はすべて株式市場に投資すべきということになる。
これは理論的には正しいかもしれないが、問題は株価が下がった時のショックが大きいこと。脳は得よりも損に強く反応するように進化してきたので、いくら長期的には株価は上昇すると思っていても、大きな損失は避けたいはずだ。
それに対して積み立て投資では、値下がりはより多くの株を買える絶好のチャンスになる。このように発想を変えれば、心理的な安全性が高くなる。働いて損失を挽回するのが難しいシニア層は、ハイリスクハイリターンの一括投資より、毎月コツコツと積み立てるのが向いているだろう。
その意味でも、今年1月に始まった新NISAの「つみたて投資枠」を活用しない手はない。
新NISAでは、本来なら配当や売却益に約20%かかる税金が非課税となり、その期間も恒久化された。「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や国民年金基金は65歳未満しか加入できないが、「人生100年時代」を考えれば、そこからさらに20~30年の資産運用期間がある。NISAは何歳からでも始められるのが大きな魅力だ。
年間120万円までの「つみたて投資枠」と年間240万円までの「成長投資枠」があり、併用が可能。非課税投資枠は生涯で計1800万円(うち成長投資枠は1200万円)になる。上限に達しても、売却すれば買付金額分の非課税投資枠が翌年復活する。
「つみたて投資枠」は月10万円、年120万円までだが、世帯単位で考えれば夫婦で月20万円、子供が18歳を超えたら一人あたりさらに10万円の枠ができる。一般的な家庭なら、将来への備えはこれのみで十分ではないか。