長男の嫁の不満を抑える
山本氏によれば、同居する子が老親の面倒を見るのは当然のこととみなされ、食事の世話や病院の送迎程度では特別の寄与とは認められないという。介護負担があったのに相続で報われないとなると、感情的な対立にもつながってくる。
「もともと寄与分は相続人にだけ認められる制度でしたが、親の介護を“長男の嫁”などが担うケースも珍しくないため、2019年7月に相続人以外の親族が相続人に特別寄与料を請求できる仕組みもスタートしました。しかし、こちらも認められるハードルは非常に高い。介護の苦労が報われないことで、“長男の嫁”が他の義きょうだいに不満を爆発させる例も珍しくありません」
この寄与分、特別寄与料をめぐる問題を避けるうえでも、「遺言書をうまく活用するのがシンプル」(山本氏)だという。
「親の遺言書に『介護してくれた長女に他の子より×万円多く相続させることを理解してください』『世話になった長男の嫁にも×万円を遺贈します』といった内容があれば、原則その通りのかたちになる。寄与分や特別寄与料を認めるか否かといった、きょうだい間の協議そのものが必要なくなるわけです」(山本氏)
親子間で「遺留分」や「寄与分」の正しい理解を共有することが、きょうだいトラブルを避けることにつながる。
※週刊ポスト2024年3月22日号