きょうだい間でのトラブルに発展することも多い遺産相続。親の財産の“奪い合い”となるケースが多い一方で、反対に親の財産の“押し付け合い”になる局面もある。吉澤相続事務所代表・吉澤諭氏が言う。
「使い途がなくて売れる目処が立たない不動産などは、きょうだい間で押し付け合いになりがちです。子供が全員、東京に出ていて、地方に実家や畑、山林などの不動産がある場合、誰も相続したがらない状況になることは珍しくありません」
遊休化した不動産を相続すると、固定資産税の負担が生じるうえに、安全防犯上の管理義務も負わなくてはならない。空き家に対する課税強化の動きもあるし、空き地でも不法投棄などがあれば自己の責任と負担で撤去しないといけない。
「売りたくても売れなくてコストばかりかさむ“負動産”が、きょうだい間で押し付け合いになるのです」(吉澤氏)
不要な土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度が昨年4月にスタートしたが、「法務局に申請しても審査があり、要件を満たしていないと適用が受けられない。申請してから認められるまでに半年~1年かかるという話ですし、どこまでアテにできる制度なのか、まだはっきりしない」(吉澤氏)というなかで、どういった解決策があるのか。
「選択肢として相続放棄がありますが、プラスの財産も含めて放棄することになってしまう。資産価値のある不動産や現預金が遺産にあると、簡単には選べない。そこで、プラスの財産がある場合の解決策としては、“負担となる不動産を継ぐ人が現預金などを多めに相続する”というやり方が有力です」
相続人が子供3人で、現預金1200万円と資産価値ほぼゼロで処分に困りそうな不動産が遺産の場合、400万円ずつの等分ではなく、不動産を相続する子が600万円、他の2人が300万円ずつといった具合に差をつけるやり方である。