忖度なしに「いいものはいい、ダメなものはダメ」
山崎さんと水瀬氏が、ほったらかし投資術を完成させるまでには紆余曲折があったという。水瀬氏が述懐する。
「本書が第2版、第3版と進化していくにつれ、日本で買えるインデックスファンドの商品が充実していったのですが、最終結論としてのオルカンに辿り着くまでには山崎さんと意見の食い違いもありました。
というのも、山崎さんはインデックス投資がいいとは言いつつ、本人はファンドを買っていませんでした。それは、本人が特定の金融資産を保有してしまうと評論家としての鋭さが鈍る可能性があると懸念していたからのようです。そのため、実践派の私に意見を求めていたと思われますが、『世の中の投資信託の99%はクソだ』と平気で口にする人ですから一筋縄ではいかない。ただし、山崎さんのすごいところは忖度なしに『いいものはいい、ダメなものはダメ』とはっきり言えるところ。金融機関からは嫌われても、個人投資家たちからの信頼は厚かったのです」
担当編集・友澤和子氏もこう語る。
「合理的でお金にこだわっていて、人によってはケチなイメージを持たれるかもしれませんが、実際には高価なお酒を振る舞うなどおおらかにお金を使う方でした。“人付き合いも人生の幸福度を高めるひとつの投資”と考えていたところがあったと思います」
できるだけお金にとらわれないように、なるべくシンプルに、ほったらかしてお金を増やす。時間とお金に余裕ができれば、それを人生を豊かにする目的で使える──それこそが「ほったらかし投資術」の極意のようだ。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2024年4月5日号