アメリカについていえば、衣料品から自動車、スマートフォンに至るまで、様々な製品を輸入しているのだが、アメリカのGDP全体額からすれば、大した金額ではない。IT、金融をはじめ、第3次産業が大きく発展しているからだ。また、農業は自給率が高く、エネルギーについては、オイルシェールの開発が進んだことで、海外依存度は年々下がっている。貿易に頼らずとも経済を回していけるだけの懐の深さがアメリカにはある。
ドナルド・トランプ大統領が保護主義政策を打ち出すことで、万が一、輸入に加え、輸出も減ってしまったとしても、大したことはない。国内に生産を回帰させることで、中産階級の就業機会を増やし、彼らの所得水準を向上させることができれば、トランプ政権にとって、そのメリットは大きい。
実は中国に関してもアメリカと同様、貿易の縮小は致命傷とはならない。
中国の経済成長に占める貿易の割合は小さい。2016年の名目GDPは74兆4127億元であり、2015年と比べ5兆5075億元増加しているが、貿易収支(黒字)は3兆3473億元であり、2015年と比べると3297億元減っている。すでに、貿易は経済成長に寄与せず、成長を引き下げる方向に作用しているが、それはGDP増加分に対して6.0%に留まっている。また、貿易収支の名目GDPに対する割合は4.5%に過ぎない。成長は投資や消費によって牽引されている。