利上げでゾンビ企業の淘汰が始まる
一般庶民が「貧乏なまま」の生活を強いられる一方で、銀行からの融資を受けて生き延びてきた企業の多くは倒産の憂き目に遭うことが予想される。経済評論家の加谷珪一さんはこう語る。
「融資の金利は今後確実に上がります。いままでの低金利ですら経営が苦しかった企業にとって、金利上昇は業績の悪化に直結する。この先銀行から借り入れができず、利払い負担が増えることで“淘汰”されていく企業が増えるでしょう」(加谷さん・以下同)
実は、銀行からの借り入れが多すぎて、利子の支払いだけで手一杯の“ゾンビ企業”が、国内企業の2割を占めるともいわれている。大企業を中心に「過去最高益」などと喧伝されているが、本当に利益を上げているのはほんの一握りの優良企業だけなのだ。
「日本企業の利益が増えたといっても、そのほとんどは人件費や外注費を削ったコストカットによるもの。本当に価値のあるものをそれに見合った値段で売ることで得た利益ではないので、賃上げなどできるはずもないのです。
賃上げができるような利益を上げているのは、ユニクロを展開するファーストリテイリングやニトリ、アイリスオーヤマなど、消費者が“値上がりしても買いたい”と思えるような価値を提供している企業だけ。今回の賃上げは、いい会社とそうでない会社の差を浮き彫りにしたとも言えます。
政府は表立って口にはしませんが、賃上げができないような“ダメな企業”が淘汰され、よい企業だけが生き残る新陳代謝が起きることを期待しているのではないでしょうか」
だが“ゾンビ企業”や、賃上げができないダメな企業がふるいにかけられれば、多くの失業者が出る。新陳代謝の結果、日本がもっと貧しくなってしまっては元も子もない。ところが加谷さんは「それこそが健全な流れ」だと指摘する。
「失業者が出たら、政府が手厚く支援すればいいだけの話。その結果強い企業だけが残れば賃金は上がり、ひいてはそれが日本全体の成長につながるはずです」
そうした視点や失業者をケアするための方策を政府が持ち合わせていないという悲劇こそが、私たちが貧しさのループから抜け出せない一因だろう。
※女性セブン2024年4月18日号