お風呂の蛇口のお湯は出しっぱなし
相撲部屋は稽古だけでなく、力士たちが寝食をともにする場となる。それだけに、“運営コスト”は非常に大きい。
相撲部屋を運営する親方には、協会から力士養成費(幕下以下力士1人につき月7万円)、相撲部屋維持費(力士1人につき場所ごとに11万5000円)、稽古場維持費(力士1人につき場所ごとに4万5000円)が支給される。力士1人につき年間180万円が支払われ、10人の力士なら1800万円、20人なら3600万円となるわけだ。金額としては少なくないように思えるが、運営は決して楽ではないという。
紀子さんは、1982年に力士12人で藤島部屋が創設された当時を振り返って、「食費だけでも年間2000万円以上かかりました。本当に驚きましたね」と話す。
「1年を通じて一定の費用が発生するわけではなく、年3回の地方場所(大阪・名古屋・九州)になると負担は少し軽くなります。地元の後援者の方などから、差し入れがあったりしますので。とはいえ、とにかく食べることを疎かにできない世界ですから、食費の負担は大きいです」
相撲部屋は集団生活になるので光熱水費の負担も大きいが、紀子さんは「とくに水道料金の支出が大きい」と語る。
「(力士が)十数人だった頃に、月額30万円だったと記憶しています。トイレだけでも、それぞれが1日に何回も入り、大や小やと水を流していると、もの凄い量になる。お風呂も大変です。体の大きい子たちを2~3人一緒に入れると、お湯がドバーッと溢れますよね。だからお風呂の時間は蛇口のお湯が出しっぱなしになるんです。
あまりに水道料金が高くなるので、水道局の担当者がものすごい水漏れが発生しているのではないかと飛んできたこともあります。中野区にはそれまで相撲部屋がなかったので、担当者も驚いたのでしょう。いくら調べても水漏れがないから、首を傾げていましたね」