2022年の就業率改善が根拠というが…
JILPTは2018年度の前回推計においては、「ゼロ成長・労働参加現状シナリオ」の2040年の就業者数を5245万人、「成長実現・労働参加進展シナリオ」は6024万人としていたので、今回はどちらも上方修正した。しかも今後の就業者数は減り続けると結論づけていたが、それを一転させ、就業者数が増え得るという見通しに改めたのは、就業率が高めに推移するという前提に置き換えたからだ。「成長実現・労働参加進展シナリオ」の場合、前回推計は2040年の就業率を60.9%としたが、今回の推計では66.4%だ。
その根拠は、足元の2022年の就業率が改善したことである。だが、これをもって今後の就業率も高めに推移すると判断することには疑問が残る。今回の推計については、専門家から「年金財政検証などに使用されることから、楽観的な見通しを示す必要もあったのでは」との声が出ている。結論ありきではないのか。
「ゼロ成長・労働参加現状シナリオ」についても就業率を前回より高めに置いているので、「956万人減」という数字も甘い見立てとなっている可能性がある。
現実問題として、今後の就業者数を増加させることは難しい。維持することさえ容易ではない。人口減少社会においては、性別や年齢を問わずすべてが減っていくことになるからだ。
女性と高齢者の就業はすでにかなり進んでいる
日本の生産年齢人口(15~64歳)がピークを迎えたのは1995年の8716万人だ。これに対し、多くの企業は男性の働き手の目減り分を女性と高齢者の就労促進によって補ってきた。当時、女性の労働参加は遅れており、高齢者人口は増え続けていたからだ。
政府も政策で後押しをした。いまだ十分とは言えないが仕事と家事・育児の両立支援が拡充され、結婚や出産・育児を機に仕事を離れる女性は少なくなった。定年年齢の引き上げや再雇用制度の整備によって60代以降も働き続ける人は珍しくなくなった。
この結果、1995年と2023年を比較すると生産年齢人口は1321万人減ったにもかかわらず、就業者数は6457万人から6747万人へと290万人増加する逆転現象が起きたのである。