本人に代わって退職する意思を伝えてくれる退職代行サービス。当事者が出社して企業側と直接やりとりをしなくても済むため、辞めることが言いにくい人や辞めたくても辞められない人には重宝するサービスとなっており、若い世代を中心に利用者は少なくないようだ。
とはいえ、実際に退職代行サービスを利用して後悔している人もいる。また、同僚が退職代行を使って辞めたことで、職場が大混乱に陥ったケースもあるようだ。当事者たちにに話を聞いた。
SNSでブロックする感覚で…
就職活動中の20代男性・Aさんは、短期離職を繰り返している。新卒で退職代行サービスを利用して以来、「退職が癖になっている」と話す。
「社会人になってから8回会社を変わりました。直近の会社は1か月しかもちませんでしたね。親からも『退職が癖になって逃げ癖がついている』と責められ、何も反論できませんでした」
退職代行サービスは、退職手続きに本人が関わらなくて済む。Aさんは、まるで「SNSでブロックする感覚」だと言う。
「最初の就職で退職代行サービスを利用し、その手軽さに目覚めてしまった感はありますね。入った会社がイメージと違ったり、そこに嫌な人がいたりすると、辞めたくなります。本当は“失踪”したいけど、親に連絡がいったりしても面倒だし、退職代行サービスに依頼した方がマシだと思って……。まるでLINEやXでブロックする感覚で退職することができるので、繰り返してしまいます。
退職の意思を自分で伝える面倒を考えるぐらいなら、業者に頼んで2万~3万円で済ませる方が楽だし、高くないと思ってしまうんですよね」(Aさん)
そんなAさんは、「一度使うと沼にハマってしまう。もう気分転換で転職を繰り返している感じ」と自嘲気味に言う。
「どんな仕事も長続きしなくなったという意味では、面倒でも自分で会社と向き合ったほうがよかったのかなと思う時はありますね。イヤなら辞めちゃえ、っていう感じで今に至ってしまいました。このままだと何も経験やスキルが身につかないまま、年齢だけ重ねることに……」(Aさん)