分析の元になっているのは“政治的な推計”
今回の分析に活用されたデータは国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「日本の地域別将来推計人口」(2023年)であるが、その大元である「日本の将来推計人口」(2023年)はかなり甘い前提を置いている。いわば“政治的な推計”となっているのだ。
甘い前提は2つある。1つは年間出生数の推移だ。2024年は2023年より増えて77万9000人になるとしている。その後も横ばいで進み、2030年になっても77万4000人を維持すると見立てているのだ。
見立てはすでに外れている。社人研が見込んだ2023年の出生数は76万2000人だが、厚生労働省の速報によれば実績値は75万8631人だ。2024年も前年を下回るペースで推移している。近年、出生数の下落幅は大きくなってきており、「2030年代まで横ばいで進む」というのはかなり無理がある。
2つ目は、外国人人口の見通しだ。社人研は2017年の前回推計では年間6万9000人ペースで増えることを前提としていたが、これを一挙に2.4倍増の16万4000人に増やした。
根拠はコロナ禍前の2016~19年の入国超過数が平均して16万3791人だったことだけである。毎年16万4000人もの人がどこの国から来るのかは示せていない。足元の入国超過数だけで機械的に将来人口を推計するというのはあまりに乱暴だ。
「日本の将来推計人口」は、年金の財政検証などに使用されることから、かねてより政権与党の意向を反映していると見られてきた。事実、実績値との乖離は毎回大きかった。それにしても今回は恣意的な印象が強い。推計というより“願望”のようになっているのだ。
人口戦略会議は、こうした社人研の推計を下敷きにして「消滅可能性」をはじき出したのである。根拠が薄弱なデータを鵜呑みにした分析をいくら重ねてみたところで、正しい結論を導くことはできない。