肝心な部分が曖昧なままの分析結果
ベースとなるデータの甘さはもとより、人口戦略会議の分析手法にも粗さが見られる。
「消滅可能性自治体」が前回と比べて150以上も減った要因を、人口戦略会議が外国人の増加に求めていることは先述した通りだ。
社人研の推計は、今後さらに外国人が増え、2050年には総人口の7.0%を占めるようになるとしている。総人口の7%が外国人となれば、その中に20~39歳の外国人女性が相当数含まれるだろう。さらには外国人女性による出産数も増加すると考えるのが自然だ。
社人研の外国人人口の見通しは根拠の薄いものであることは先に言及した通りだが、そうであっても人口戦略会議はこの推計を下敷きにしているのだから、各自治体の20~39歳の外国人女性の増加による影響が今後どうなるか明確にする必要がある。
ところが、分析結果はこの点を明確にしていない。肝心な部分をあいまいにしたまま「消滅可能性」があるとか、ないとかを論じられても説得力がない。
(後編に続く)
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。