櫨氏や平野氏は、ブラック・スワンが必ずしも日本経済に悪影響を及ぼすとは限らないとの意見だ。では、「EU崩壊」や「米中貿易戦争」が起きても日本経済は大丈夫といえるのだろうか。信州大学経法学部教授の真壁昭夫氏はこういう。
「EUショックでヨーロッパ経済が混乱すれば、もちろん日本経済にも影響が及ぶでしょうが、それを緩和するために安倍政権は財政政策を打ち、国内需要をさらに拡大させようとするでしょう。また、痛みを伴う労働市場などの構造改革を先送りにする可能性もあります。
しかも、日本はいま、アジア向けの輸出でドイツなどヨーロッパの国々と激しい競争をしています。EU崩壊で仮に欧州各国の経済が悪くなれば、アジアでの欧州シェアを日本が奪えるかもしれません」
真壁氏は米中の貿易戦争でも「日本は漁夫の利を得られるチャンスが出てくる」という。
「米国と中国の貿易関係が悪化したとしても、両国とも自国で消費するものをすべて自国で生産できているわけではありません。そのため、日本が米国と中国の対立を上手く利用し、輸出量を増やすことができれば、日本経済にはプラスです」