さらに国民年金法では、年金機構に対して、これらの手続きを行なわせることにしています。国税徴収法は、税金滞納者からの税金を取り立てる手続きを定めた法律ですが、その滞納処分の方法は年金保険や健康保険の保険料の滞納者にも適用されます。
具体的には、滞納者の預貯金や不動産を差し押さえる手続きです。滞納処分として金融機関は滞納者に対する貸し付けがあって相殺する必要があるような場合以外は、処分をした役所に支払います。不動産の差し押さえがあると、当該不動産は公売に付されて換価され、その代金から税金や保険料が徴収されます。つまり、滞納処分ができる年金機構が保険料滞納者の預貯金を差し押さえすることは可能です。
ただし、国民年金法102条では、国民年金の保険料を徴収する権利は2年で消滅時効することとされています。なので、2年を経過した保険料は滞納処分の対象となりません。
【弁護士プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年2月10日号