要因の1つは「賃貸用・売却用」住宅の増加
2018年と2023年を比較すると、空き家は約50万6000戸増えたが、住宅総数は5倍以上の約261万4000戸増だ。空き家の実数は毎年平均10万戸ペースの勢いで増え続けているのに、それを上回る分母の拡大が上昇率を極めて緩やかなものに見せているのである。
今後、空き家を増やす要因は大きく2つある。1つは、「住むことを目的としていない住宅」の増加だ。賃貸用や売却用の空き家が多いのである。
住宅・土地統計調査で空き家総数が過去最多の899万5200戸を記録したといっても、これには賃貸・売却用や別荘などが514万2500戸(うち別荘などは38万2900戸)含まれている。居住者や利用者がいない実質的な「放置空き家」は385万2700戸にとどまる。いわば、供給過剰と言える状況なのだ。
少子化で住宅取得の中心世代である30~40代が減少傾向にあるのに、新築住宅がどんどん提供されているのだから当然だが、住宅デベロッパーにしてみれば「需要があるから建て続けている」ということである。
人口減少下でも需要が拡大している背景には日本人の“新築信仰”の強さに加えて、物件価格の上昇が見込める大都市の中心市街地などの物件に国内外の投資マネーが流れ込んでいることがある。年配の富裕層が相続税対策としてセカンドハウスを購入する動きが大きくなっていることも需要を押し上げている。
投資マネーが大都市の物件に流れ込んでいることは、三大都市圏の7都府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県)の空き家の3分の2が賃貸や売却用で占められていることが証明している。これらの中には思うように売り抜けず、“塩漬け”となっている物件も含まれよう。このような「住むことを目的としていない住宅」もまた「放置空き家」に転じやすい。