逆に言えば、アメリカへの貿易で儲けている特定の中国企業を挙げることは難しい。銘柄では、裕元工業(00551)、富智康集団(02038)、創科実業(00669)などを挙げられなくもないが、この内、2社は台湾系企業である。中国企業にとってアメリカへの輸出業務はあまり儲からないうまみの少ないビジネスである。中国企業にとって最も重要なのは、世界第2位の規模で高成長を続ける中国市場である。
しかし、日本はそうではない。日本の輸出産業に占める自動車のウエイトは大きい。トヨタはアメリカでのビジネスで、大きな利益を得ている。さらに、ライバルとなるアメリカ企業が存在する。その点が、中国との大きな違いである。
トランプ大統領が「貿易、税、移民、外交問題に関するすべての決断は、アメリカの労働者とアメリカの家族を利するために下される」(アメリカ第一主義)、「保護主義こそが偉大な繁栄と強さにつながる」と考える以上、アメリカで巨額の利益を得ているトヨタは恰好の攻撃対象となってしまう。
フォルクスワーゲン(VW)は2015年9月、アメリカにおいて排ガス規制に関する不正を問われ、アメリカ市場で厳しい状況に追い込まれたが、以前から中国重視戦略を採っている。中国は生産台数において世界最大の市場となって、既に8年が経過している。トヨタも脱アメリカを選択する日が来るのかもしれない。