即席麺の価格から考えると円安元高の潜在的余地は大きい
日本のマスコミも断片的に報じているが、たとえば華為技術(ファーウェイ)など大手企業における優秀な若手エンジニアの給与水準は既に日本よりもはるかに高い。失業率が高いというが、業者、個人を問わず、微信(ウィーチャット)の職探し朋友圏が大小無数に存在し、スーパーの販売員から保険の外交員まで、職を選ばなければいくらでもお金を稼ぐ機会は得られる。日本は就職に苦労するが、中国では職に就きやすい。その分、能力主義が徹底しており、職を失うリスクも大きいが、失業したり、自分に合わない職場であったりすれば、さっさとやめて、次を探すことができる(転職の場合はさすがに、次の職を探してから辞める人が多いが)。高い失業率の割には悲壮感、閉塞感は小さいようだ。
それにしても、中国の物価は安い。康師傅の主力商品である紅焼牛肉麺(袋麺)は一食あたり日本円にして65円である。たとえば、日本で最も人気のある即席麺の一つであるサンヨー食品のサッポロ一番みそラーメンの最安値価格(6月3日時点、ネット検索)は5袋入り473円、つまり一食あたり約95円である。
即席麺の価格をもとに為替レートを決めると、1元=31.5円となる計算だ。過当競争が常態化している中国では実感として、生活必需品の価格は安い。実際の円・人民元為替レートは1元=21.7円程度なので、円安元高の潜在的余地は大きいとみられる。ドル円為替で円安による輸入物価の上昇が消費者にとって痛手となっているが、日本にとって輸入先第1位の中国の通貨に対して、この先円安が加速するとしたら、日本の物価には“雪上加霜”である。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。