どんなに仲睦まじい夫婦でも、いつか死別する日が来る。その事実から目を背け続けていると、いざ配偶者に先立たれた時、押し寄せる数多の難題に対処できない。ひとりになったらどう生きるか、今のうちに夫婦で話し合い、準備を始めなければならない。
お金の問題を考える際、夫婦でお互いの財産を整理・把握しておくことが欠かせない。行政書士で相続・終活コンサルタントの明石久美氏が語る。
「配偶者の所有財産を把握しておらず、亡くなった際に困ったというケースは多い。財産目録を作成して双方の財産を確認しておきましょう。大病を患えば治療費や入院費、要介護状態になれば介護費、夫婦どちらかが亡くなれば葬儀やお墓などの冠婚葬祭費と様々な出費がかさみます。それに備えるには、何よりも『財産の可視化』が肝要です」
預貯金や保険、有価証券、不動産などプラスの財産に加えて、ローンや借金などマイナスの財産も夫婦ですべて書き出す。
「電子マネーやネット銀行、ネット証券口座などのIDやパスワードも紙にメモしてわかるようにしましょう。配偶者が亡くなった後で『ログインできなくて困った』という相談は非常に多い。そのうえで、通帳や銀行印、不動産の権利書や保険証書などは防犯上、複数か所にまとめて保管しておく」(明石氏)
財産の棚卸しをしたら、ひとりになったら無駄になるであろう支出を見直す。
「配偶者が入っていた定額サービスを、亡くなった後も使っていないのにそのまま払い続けてしまうケースが散見されます。水や健康食品などの定期便やサブスクの動画配信サービスなども、どちらか片方しか活用していないものであれば、それぞれに把握しておくべきです。解約の際も、IDやパスワードが必要になることがあるので、お互いに共有しておく必要があります。
同時に、お互いの財産が管理しやすいように複数ある銀行口座を2行程度にまとめるといった財産の集約も進めましょう」(同前)