田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の金融政策に変化、緩和から中立へ向かう意味

 そもそも、SLF、MLFを行うこと自体が資金供給である。そうした点では金融緩和に違いない。ポイントは量的な流動性拡大を図る中で、その価格となる金利が引き上げられたということに過ぎないとも考えられる。

 しかし、中国人民銀行は春節休暇直前、貸出の伸びが高すぎることから、商業銀行に対して第1四半期の新規貸出を厳しくコントロールすると発表している。第1四半期の不動産向け新規貸出純増額について2016年第4四半期よりも総量、伸び率ともに低く抑えるといった政策目標がある。

 また、貸出増加速度が速い銀行は、MPA(マクロプルーデンス評価システム)による差別化された貸倒引当金、預金に対する保険費率などの罰則規定にかかる可能性がある。こうした要因から新規貸出をコントロールするとしている。金融政策が緩和から中立に戻りつつあるのは事実である。

 日本では、米中関係の悪化から輸出が減少し、景気が悪化するのではないかといった点を懸念する見方が多い。また、資金の海外流出が止まらず、そのことが中国経済に深刻な影響を与えるといった見方が多い。

 しかし、中国本土ではそうした見方は少数派である。巨大な国内市場を持つ中国では貿易の経済に与える影響はそれほど大きくなく、資金の海外流出は単なるドル高による投機に過ぎないといった見方が多数である。

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