せめて「打率.280、25本塁打、80打点」ぐらいはやってほしい
日本経済を考えるにあたっては、プロ野球の外国人選手を見れば、かなり的確に状況を把握できると思います。阪神タイガースの例で言えば、昨年、年俸130万ドルで獲得したノイジーの成績は、打率.240、9本塁打、56打点でした。一昔前なら、残留することはなかったでしょう。「ノイジーは守備がうまい」「日本シリーズでホームランを打った」ということで残したのでしょうが、正直この数字はいただけない。
外国人選手は打率.280、25本塁打、80打点ぐらいはやってもらわなければならない。それが日本における外国人選手の役割だったのですから。しかし、ノイジーが今年も阪神に残っている状況、これは単に「円」の価値が低下して、もっといい選手が獲得できなくなったからに過ぎないでしょう。「日本球界にも慣れてるし、年俸もそこまで高くないし、新たに選手を獲得しても活躍するかわからないし、それなら残ってもらおうか」となったのでは。
ちなみにノイジーは、昨年の年俸130万ドルから、今年は110万ドルと20万ドル減で契約したと報じられています。この減少分が、ちょうど日本円が弱くなった(円安になった)分と考えてよいのではないでしょうか。
逆に日本人選手のメジャー挑戦においては、今の円安ドル高の状況だと、選手からすれば同じ野球をやってもらえるお金が圧倒的に増えるし、メジャー球団の方も安く選手を獲得できるので、ウィンウィンです。
日本にやって来る外国人選手のレベルが下がり、メジャーで活躍する日本人選手が増えたことを受けて、単純に「日本の野球レベルが上がった」と喜んでばかりはいられないのではないでしょうか。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。