2024年の春試験における合格者は、東大はトップをキープしたものの前年の春試験より4人少ない189人で、過去最少を更新した。総合職の合格者総数は1953人なので、東大は1割にも満たないということだ。
東大生の「キャリア官僚離れ」が進んだ理由はいくつもあるが、長時間労働の常態化が主要因の1つと見られている。若い世代では働き方に対する関心が高まっており、過酷な職場に対して「受け入れ難い」と感じる人が少なくない。国会議員からの事前の質問通告が遅く、国会答弁作成終了時間が夜中に及ぶといった官僚の過酷な働きぶりが敬遠されているのである。
こうした官僚を取り巻く労働環境の悪さを知って、東大生に限らず他の一流大学でも「同じ激務ならば、官僚になるよりも、より多くの報酬を得られる外資系企業などに勤めたほうがよい」と考える学生が少なくないのだ。起業する人も増えている。
現状を見るにつけ、国家の土台部分が崩れ始めている印象を受けるのは私だけではないだろう。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。