住まい・不動産

定年前後で親が遺した家が手に入っても持て余すだけ… 「1人暮らし高齢者」の増加が空き家問題を深刻化させる

【空き家問題】「率」は地方圏、「数」は都市圏の課題

【空き家問題】「率」は地方圏、「数」は都市圏の課題

「1人暮らしの高齢者」増加でさらに加速

 もう1つの要因は、1人暮らし世帯の増加だ。今後はこちらの要因のほうがウエイトを増しそうである。

 社人研の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2024年)によれば、2050年の世帯総数は5260万7000世帯で、2020年(5570万5000世帯)より309万8000世帯少なくなる見通しだ。ところが、1人暮らし世帯は2020年の2115万1000世帯から2050年の2330万1000世帯へとむしろ215万世帯も増えるというのである。

 しかも未婚者が多くなっており、今後は身寄りのない1人暮らしの高齢者が増えそうだ。相続する親族がいなければ、空き家の拡大を加速させることになろう。

 1人暮らしの高齢者に子どもがいたとしても、亡くなった親が遺した家に住むとは限らない。「人生100年」と言われる時代となり、80代後半や90代で亡くなる人が増えている。その頃には相続する子どもは定年前後の年齢となっており、大半の人は自宅を取得して自分の家族と住んでいる。そんなタイミングで親が遺した家が手に入ることになったとしても持て余すだけだ。

 親族が少なくなった現代においては、相続を重ねて2軒どころか3軒以上の住宅を所有することになる人もいる。不便な地方の住宅を相続した場合、売ったり貸したりすることが難しく、すべてが放置空き家に転じていくことが珍しくないのだ。

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、最新の統計データに独自の分析を加えた未来図を示し、これからの日本が人口減少を逆手に取って「縮んで勝つ」ための方策を提言している。

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