しかし、社員の側は手間が増えるだけで、特にメリットはないように見えるが……。
「決してそんなことはありません。まず手間がそんなにかかるのかという点ですが、マイナポータルに所得や保険料などの情報集約が進めば、スマホで金額を確認して『間違いありませんか?』『はい』とタップしていくだけで確定申告が終わるようなシステムにできるはずです。実際に海外では、スマホで3分でできるような確定申告のシステムが稼働していると聞きます。
確かに扶養控除や配偶者控除などが絡むと少し面倒なんですが、これは年末調整でも確定申告でも会社員が行うことは一緒です。むしろ年末調整のほうが用紙が複雑なくらいです。だから、控除を受けられるのに、わからないからやらない、控除の存在を知らないという人が一定数いる。これが自分で確定申告をする方式になれば、控除で還付金がもらえることに気づくし、お金が戻るなら控除を受けるために申告しようというモチベーションにもなるでしょう。控除の申告をやっていない人は、年末調整でも元から控除できていません」(山田氏)
給与所得者の場合、所得税を給与から源泉徴収されているので、すでに支払い済みであり、その納税額に異論がなければ承認するだけで済む。別に控除の申告をしなくても、罰せられるわけではない。
会社員が確定申告をするようになるメリットは
また、税務署の負担が重くなるのは事実だが、やり方次第で軽減は可能だと山田氏は言う。
「会社員は源泉徴収されているのだから、確定申告の時期も3月に期限を切らず、1年中いつでもできるようにすればいい。そうすれば、税務署の業務も平準化できて、負担は軽減されるはずです」(山田氏)
現行制度でも、医療費控除を受ける場合だけでなく、年の途中で退職して年末調整を受けていなかったり、住宅ローンを組んだ場合など、サラリーマンが払い過ぎた所得税を取り戻す還付申告を行なうケースは多い。その還付申告書は、その年の1月1日から5年間提出することができる(5年前まで遡ることができる)。