山田氏は、会社員などの給与所得者も自分で確定申告をするようになれば、社会が変わるのではないかと期待する。
「確定申告を会社に任せきりにしていたために、自分がいくら納税しているか、年金保険料や健康保険料をいくら払っているかに無頓着な人が非常に多い。自分で確定申告をするようになれば、納税者としての“当事者意識”を持つことにつながり、政治に対する見方も変わるのではないでしょうか」
税務署のコスト増大の軽重については意見が分かれるところで、河野氏がそれについてどう考えているかは不明だが、少なくとも会社員が確定申告を自分でするようになれば、会社側はこの業務から解放され、コスト削減になるのは事実であろう。
とはいえ、現状では、確定申告の方法には、昔ながらの紙での提出と、オンライン入力で完結するデジタル申告(e-TAX)の両方がある。後者は前者に比べてかなり簡単にはなったが、それでも確定申告をしたことがない人がいきなりできるかといったら疑問である。社会の「デジタル化」が遅れている日本では、河野氏の構想通りにスムーズに移行できるようになるまで、まだ時間がかかるかもしれない。
取材・文/清水典之(フリーライター)