この理由にはやはり「大規模な金融緩和によるカネ余り」や「仮想通貨そのものの認知度」「取引所の制度整備」「ETFの承認」などが考えられますが、最も大きいのは「金融システム不安」なのかもしれません。
日米欧の壮大な金融緩和によってマネーの価値が希薄化し、BRICSの台頭で米ドルが基軸通貨の座を追われつつある中、「現行金融システムからの逃避先としての仮想通貨」といったニュアンスを帯びているように見えます。
ハイパーインフレに苦しむジンバブエでは、仮想通貨は身を守るための貴重な手段となってきました。またエルサルバドルでは2021年、ビットコインを法定通貨として導入しています。自国通貨の信用がない国では、ビットコインの方が信頼性が高いためです。
また中国など海外送金に規制のある国では、ビットコインに換えて送金するといった事態が起きてきたため、当局が規制を強めてきた経緯があります。金融緩和が続いているうえ、世界の金融システムが不安をぬぐい切れない以上、こうした状態は続くでしょう。
最大で1500種類以上あったとされる仮想通貨も、価値を持ち続けるのはビットコインやイーサリアム、リップルといった代表的なものに限られると思います。
しかし仮想通貨もやがてある日「一瞬にして無価値化」するといった憂き目にあう可能性があります。理由は前述した通り「価値の裏付けがないこと」。
さらには、昨今の仮想通貨はマネーロンダリングのツールとして利用されている側面もあり、当局に目をつけられればどうなるかわからないといった危険性を孕んでいるためです。次世代金融システムを走らせるにあたっては、補足できない資産の動きはできる限りふさいでおきたいところではないでしょうか。
※長嶋修・著『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)より、一部抜粋して再構成
【プロフィール】
長嶋修(ながしま・おさむ)/1967年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会初代理事長。国交省・経産省の様々な委員を歴任。YouTubeチャンネル『長嶋修の日本と世界の未来を読む』では不動産だけではなく、国内外の政治、経済、金融、歴史などについても解説。広範な知識と深い洞察に基づいた的確な見立てが注目を集めている。マスコミ掲載やテレビ出演、講演等実績多数。著作に『不動産格差』(日経新聞出版)、『バブル再び~日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)など。最新刊は『グレートリセット後の世界をどう生きるか~激変する金融、不動産市場』(小学館新書)。