最寄りの役所で完結
だが、2024年3月にスタートした戸籍謄本の広域交付によって状況が一変した。
「広域交付は本籍地以外の市区町村から被相続人の戸籍謄本・除籍謄本を受け取れる制度です。
この制度により、本籍地以外の市区町村でも被相続人の戸(除)籍謄本を受け取れるようになりました。被相続人の本籍地が複数にまたがっていても最寄りの役所ですべての戸籍謄本をまとめて入手できます。本籍地がある自治体に申請する必要はありません」(鈴木氏)
自治体によるが申請から受け取りまでの期間は最短で即日。Aさんのように、数か月かけて本籍地を駆けずり回る必要はなくなったのだ。
ただし、広域交付に対応するのは電子データ化された戸籍謄本のみ。概ね昭和30?40年より前の戸籍謄本はまだ電子化されておらず利用できないことを覚えておきたい。
「戸籍謄本の広域交付を利用できるのは子供のほか、被相続人の配偶者と父母まで(被相続人も生前に取得可)。本人の兄弟姉妹や弁護士、司法書士などの第三者は利用できません。被相続人が生きているうちに自分の戸籍を集めておくと、後の手続きがスムーズに進みます」(鈴木氏)
近い将来、さらに便利になる可能性がある。全国の自治体で進むのが、コンビニでの戸籍謄本取得だ。
「マイナンバーカードと連動させたサービスです。現状では原則として自分の戸籍謄本しか取得できませんが、将来的には広域交付の仕組みと連動して、相続に必要な被相続人の戸籍謄本をすべてコンビニで取得できることが期待されます。
また、現在総務省とデジタル庁が組んで、戸籍謄本の『電子交付』を検討しており、2024年度中に制度の詳細を決めるとしています。インターネットを通じて申請し、電子化された戸籍謄本がスマホやパソコンに届く仕組みを想定しているようです」(鈴木氏)
近い将来、戸籍集めは外に出ることなく終わるかもしれない。
※週刊ポスト2024年10月18・25日号