患者や病院に大きな混乱が生じると懸念されているにもかかわらず、政府は紙の保険証からマイナ保険証への移行を急ピッチで進めている。その背後を取材していくと、巨額の予算が流れ込む団体への天下り、そして競争入札もないまま受注する企業群の存在に突き当たった──。【全3回の第1回】
登録解除が相次ぐ理由
12月2日の紙の保険証廃止(新規発行の停止)を前に、「マイナ保険証」の登録を解除する動きが広がっている。登録解除が可能になった10月28日からわずか10日間で申請が792件に達し、今後、さらに増えそうだ。
なぜ、自分からわざわざマイナ保険証を使えなくするのか。
福岡資麿・厚労相は、「現時点で解除の理由は把握していない。分析する必要がある」と語ったが、理由ははっきりしている。新たな“紙の保険証”がほしいからだ。
保険証が廃止された後も、マイナカード未取得者やマイナカードを健康保険証として利用する登録をしていない人には、紙の「資格確認書」が送付され、保険証代わりに利用できる。しかし、マイナカードに保険証を登録した人は原則、資格確認書はもらえない(後期高齢者には送付される)。
そこでいったんマイナ保険証を登録した人が、資格確認書を得るために登録解除を申請していると見られるのだ。
マイナ保険証の登録者は約7627万人だが、利用率はわずかに約13%(今年9月時点)。マイナ保険証を持っていても紙の保険証を使っている人が大半だ。
「マイナポイントのキャンペーンの時にマイナ保険証を登録したが、個人情報満載のマイナカードは持ち歩きたくない。資格確認書がもらえるなら、登録解除するつもりです」(60代男性)
政府が進めるマイナ保険証移行と逆の動きが起きているのだ。