そして会計がやってきたのですが、そこで彼はいきなり「今日、お金ないんですよ。お支払いはお願いします」と言い出すのですね。こっちは「はぁ?」です。ないと言われれば「お前、皿洗ってこい」と言うわけにもいかず、私が6450円、友人が6000円を払うということになったのでした。以後8年間、彼とは一度も会っておりません。
こうした「ダメなおごられ作法」を見れば、自ずと「正しいおごられ作法」は分かってきます。結論としては「かわいげを出す」ということになります。前提として、「年下・立場が下の人にはおごる」と考えている人をまずは見つけなくてはいけない。世の中には「何がどうあろうが割り勘主義」という人もいるわけで、その人からおごってもらえる可能性は低い。だったら金ヅルではありませんが、おごってくれるタイプの人を見つけ、その人が気持ちよくなるような態度を見せてタダメシにありつく方が全員が幸せになります。
カネを払う側が気持ちよくなるような配慮を
最近、私の事務所近くでは大規模なマンション建設があり、昼時の天丼チェーンには建設関係者がよく食事に来ています。その中に現場監督風の人物・X氏がいます。彼と喋ったことがあるというわけではなく、時々その天丼屋に行くとX氏がいるんですよね。毎回彼は伝票を持つと颯爽とレジに向かう。お連れの2人が財布を出して後を追いかけると「いい、いい」と言う。2人は「えっ、本当ですか?」と言い、ペコペコし、「ごちそうさまでした!」とやるのですね。
毎回X氏はこうしています。領収書をもらっているわけでもないので、完全に「おごり」ですね。しかし、この場合、連れの2人の恐縮しきった態度こそセットになっているべきなのです。なんとなくおごってもらえそうな雰囲気がある場にいたら、基本的には注文は自分が率先して取る。グラスに水を注ぎ、皆に配る、といったことをし「かわいい下っ端」としての振る舞いをするに限ります。