そういう状況になりたくなければ、40歳を過ぎたら残りの人生の全体設計を考え、サラリーマンの安定収入があるうちに起業や副業のための新しいスキルを身につけたり、社外のネットワーク作りに励んだりして、「定年後も自力で稼ぐ方法」を研究・実験(できれば実証)しなければならない。
実は、いま世の中のサラリーマンの多くは、それが可能になってきている。大半の会社は週休2日制だから、休日をスキルアップやネットワーク作りの時間に充てればよいのである。しかも、企業はバブル期までとは異なり、コスト削減のためにできるだけ残業を減らそうとしているので、定時退社や夕食に間に合う時間の帰宅が可能となれば、夕食を終えて就寝するまでの2~3時間も使える。つまり、多くのサラリーマンは自分の時間の4割くらいは、自分の将来に投資する時間があるはずなのだ。
植木等の名ゼリフ「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」ではないが、まさに今の日本のサラリーマンという地位は、天が与えてくれた低成長時代の“安全装置”であり“社会保障システム”だと思う。
なぜなら、サラリーマンは少しくらい仕事をサボったり手抜きをしたりしても簡単にはクビにならないし、まともに働いていない社員でもせいぜい配置転換される程度で、給料が下がらないケースも少なくないからだ(もちろん、だからといってサボったり手抜きをしたりしてもよいと言っているわけではない)。
一方、商店や飲食店などの自営業は、サボれば収入が減ってしまうので、そうはいかない。また、欧米企業のサラリーマンの場合はSOP(Standard Operating Procedure/標準作業手順書)やジョブスペック(Job Specification/やるべき仕事)が厳格に定められているため、そもそもサボることができない。そう考えると、日本のサラリーマンほど自分の将来に投資する時間を安定的に確保できる稼業はないのである。