「マイナ保険証」への本格移行(従来の健康保険証の新規発行停止)となった12月2日、各地で混乱が起きた。巨額の国費を投じたマイナ保険証だが、巧妙にも、トラブルが続けば続くほど予算が投入される構図になっているのだ。果たして、移行によるメリットがあるのは、国民ではなく誰だったのか。【前後編の後編。前編から読む】
「はるかに金食い虫」
厚労省がこんな混乱を招きながらもマイナ保険証への切り替えを強行する背後には、巨大な利権の存在がある。
本誌・週刊ポスト2024年11月29日号で、マイナンバー事業を牛耳る総務省の天下り機関が、中核システムなどを無競争入札でNTTグループを中心とするITベンダー企業に発注し、マイナ予算が膨れあがった実態を報じた。
厚労省にも同じ構図があった。開業医の6割が加入する全国保険医団体連合会(保団連)の本並省吾・事務局次長の指摘だ。
「なぜ現状で利用上の問題点も少なく、使い勝手のいい紙の保険証を廃止し、マイナ保険証に切り替えるのか。厚労省は保険証の発行コストを軽減すると主張しているが、マイナ保険証のほうがはるかに金食い虫です。
まず医療機関にはカードリーダーの導入が必要。単なるリーダーなら1万円程度で済むのに、わざわざ顔認証機能を必須にして10万円くらいする機器を買わせた。オンライン資格確認用端末は既存のパソコンではなく、いわゆる専用パソコンや専用ルーターも導入しなければならない。導入には厚労省が補助金をつけたが、毎月のランニングコストは医療機関持ちで、電機メーカーは潤う。
オンライン資格確認のシステムはNTTの光回線を使わねばならない設計となっていて、それまでネット環境がなかったり、他社の回線を使っている医療機関や薬局はマイナ保険証を導入するためだけに新たにNTTと契約する必要がある。こうした厚労省のマイナ保険証利権の窓口になっているのが社会保険診療報酬支払基金です」