「詐欺には自分は引っ掛からない」と思い込んでいた
唐田さんは被害を振り返り「周りが見えなくなっていた。詐欺には自分は引っ掛からない、無縁だと思っていて、情報を目にしていなかった。今となっては自分を責めるしかありません。幸せな生活を送るためにと思ってやったことが真逆の結果になり、怖くて仕方ない」と後悔を口にします。
「私が死んでお金が戻るなら……」を考えた時もあったといいます。
唐田さんが署名させられた借金の契約書は間違いなくフェイク(偽物)です。しかしその借りた金額分が投資サイトに反映されるために、本当に借金をしたと信じさせられます。そこに付け込むように、借用書へのサインをしたことを盾にして返済を迫る。架空の借金をさせて取り立てを迫る手口を使われることで、彼女のように貯金が100万円ほどしかなくても、多額の被害になってしまうこともあります。
メタ社を相手にした訴訟は、三次以降も続くと弁護団は話しています。唐田さんも詐欺につながる広告さえ存在しなければ、人生を狂わせられることはなかったとして、集団訴訟に向けての準備を進めています。メタ社の広告をきっかけにした被害の大きさが明らかになるとともに、訴訟への動きも広がってきています。
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【プロフィール】
多田文明(ただ・ふみあき)/詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。『ついていったらこうなった』(彩図社)はテレビ番組化。また、旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)。